【研究紹介】ゴキブリ類における新たな産卵様式の発見【生態解明】

卵鞘を突き出した後、腹部に格納するチビゴキブリのメス

発表のポイント

・世界で初めてチビゴキブリの産卵方法を明らかに

・チビゴキブリの卵鞘の形態を記載

・今回発見した産卵様式はゴキブリ類で初めてのもの

・野外で分解者や被捕食者として重要なゴキブリ類の生態解明を一歩進める

 

 ゴキブリは屋内に出る害虫として非常に名を馳せている。しかしながら、屋内に侵入する種はゴキブリ全体のごくわずかであり、野外で生活する種がほとんどである。野外では分解者や被捕食者として重要な役割を担っており、欠かせない存在である。

 磐田市竜洋昆虫自然観察公園の柳澤静磨職員、九州大学修士課程の岡崎洸太郎氏、三重県の大北祥太朗氏からなる研究チームは徳島県・鹿児島県・沖縄県に分布するチビゴキブリAnaplectella ruficollis (Karny, 1915)の産卵方法を明らかにした。この研究は日本土壌動物学会が発行する学会誌「Edaphologia」に掲載された。

 今回の研究で解明されたチビゴキブリの産卵方法は、産みだした淡褐色の卵鞘を腹部末端で時計回りに90°回転させた後、58~72分かけて腹部に引き込み、2~11日間抱卵した後、樹皮などの適した場所に産下し基材で隠すというものである。一度腹部に引き込んだ卵鞘を孵化よりもずっと前に産下する産卵方法は、ゴキブリ類ではじめて確認された。卵鞘を回転させ、腹部に引き込むことから、卵胎生と密接な関係があることが考えられる。このような方法をとる種は現在まで本種しか知られておらず、同属の種がどのような産卵方法をとるのかはさらなる研究が必要である。

 また、卵鞘は隆起縁を中心に左右で形態が異なり、左側は凹み、右側は膨らんでいる。これはメスの腹部にしまう際に適した形状なのではないかと考えられた。

 今回の研究は野外で分解者や被捕食者として重要なゴキブリ類の産卵方法および生態解明を一歩進めた。

■発表雑誌: Edaphologia
■論文タイトル: A unique oviposition behavior and oothecal morphology in Anaplectella ruficollis (Karny, 1915) (Blattodea: Blattellidae)
■著者: Shizuma YANAGISAWA, Kotaro OKAZAKI, and Shotaro OHGITA
■ 2023 年1 月5 日 出版

コメント

タイトルとURLをコピーしました