2025年6月に、Zootaxaにてホラアナゴキブリの新種に関する論文が出版されました。

Wang J, Jeon A, & Cognato IA, 2025. A new adventive parthenogenetic Nocticola species (Blattodea: Nocticolidae) found in Florida, USA and Vienna, Austria. Zootaxa, 5642 (5): 493–500.
この論文ではアメリカ合衆国フロリダ州のユニバーシティパーク内の自然環境で得られたホラアナゴキブリ科のゴキブリを新世界(ここでは恐らく南北アメリカを指していると思われます)初記録としつつ、形態学的及び分子学的データをもとにペットとして流通しているホラアナゴキブリ科の一種(Nocticola sp. “Malaysia”として流通)、及びオーストラリアのウィーンにあるシェーンブルン動物園から得られているホラアナゴキブリ科の一種と同種であると結論し、新種 Nocticola vagus Wang, Jeon & Cognato, 2025として記載しています。本種は系統学的にベトナム産の標本と姉妹関係にあることから東南アジア原産の可能性があるとしています。また、オーストラリアのシェーンブルン動物園の温室にも生息していることから、他所の温室や鉢植えに関連した場所で定着している可能性があると述べています。ちなみに、種小名のvagusはラテン語で「彷徨っている」を意味し、この新種が3大陸に生息していることから名づけられたようです。
本種は単為生殖することが確認されており、これはホラアナゴキブリ科で初めての記録となります。
ここからがペットローチ界にも重要な話題ですが、本論文で検討されているマレーシア産ホラアナゴキブリNocticola sp. “Malaysia”は日本でも僅かに流通しており、今回記載された新種である可能性が高いです。現物を確認できていないので100%ではありませんが、大元は一緒ですので恐らくそうでしょう。
単為生殖を行なうホラアナゴキブリはタイでも確認しています。こちらは今回の新種に比べて明らかに小型で形態も違うため、恐らく別種なのですが、ホラアナゴキブリはオスだけで記載されている種も多く、メスだけの記載は難しいためまだ手を付けていません。今回記載された種もいくつかの種と同種である可能性が捨てきれていません。今後は雌雄の組み合わせの検討、メスの記載(またはオスの記載、あと長翅型の存在も・・・)、分子学的データの集積が重要になると思います。
ホラアナゴキブリ研究、今後どんどん面白くなっていきそうです。国産のホラアナゴキブリの飼育は少し難しいですが、そこもまた燃えるところです。私も楽しみつつ研究・飼育を進めていきたいと思います。