脱走防止

 ゴキブリは脱走の名人です。飼育ケースからの脱走を防止することは飼育者のマナー的にはもちろん、管理面でも重要です。ゴキブリ飼育において脱走防止はもっとも重要なことといっても過言ではありません。彼らはガラスやプラスチックの壁を上ることができる種類も多く、なにも対策を施さないとケースのフタを開けることさえ困難になります。

 ここではゴキブリの脱走防止方法とその材料についてご紹介いたします。

 

飼育ケースに施す脱走防止

 ゴキブリを飼育しているケースから逃がさないようにするための材料とその方法です。ケースからの脱走防止を怠るとゴキブリは容易に逸出してしまいます。塗布剤のすり減り、ネットの破れなどの異常がないか毎日確認することをお勧めします。

 

塗布材料

 ケース上部に塗ることで、プラスチックやガラスを上れるゴキブリの脱走を防止する材料です。タルク、ベビーパウダー、バター、マーガリンなども使用できるようですが、ここでは扱いやすくゴキブリ飼育でよく使用されている2種類の材料とその塗り方をご紹介いたします。

 

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炭酸カルシウム

ゴキブリの脱走防止の際、おそらく最も一般的に使用されているのがこの炭酸カルシウムです。これをアルコールに溶き、ケースの縁に塗ることでゴキブリがケースを上り脱走することを防ぐことができます。ゴキブリが肢をかけることにより徐々にすり減っていくので、定期的に塗り直しが必要です。洗浄の際は水で簡単に落ちるため扱いが楽です。ただ、逆に水には弱いため霧吹きなどをかけないように注意が必要です。一般的な薬局では販売していないことがほとんどですが、ネットなどで注文が可能です。

 

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白色ワセリン

用途としては炭酸カルシウムと同様ですが、性質が違います。こちらは水に溶けにくく、多少の霧吹きには耐えます。また、炭酸カルシウムを上ってきてしまうような種(ホタルゴキブリの初齢幼虫など)でも防ぐことができます。洗浄の際はアルコールを含ませたティッシュで拭うことで比較的簡単に落とすことができます。ベタベタするためゴミなどがくっつきやすく、塗る際も手こずりますが、炭酸カルシウムと使い分けることで種に合わせた脱走防止を行うことができます。薬局などでも販売されているため入手も簡単です。

 

脱走防止塗布剤比較表

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炭酸カルシウムと白色ワセリンの扱いやすさについて比較した表です。完全に私個人の感覚で作成していますので参考までにお考えいただければ幸いです。

 

塗り方

炭酸カルシウムの場合

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①炭酸カルシウム小さじ1杯、75~80%エタノール小さじ2杯を小さなカップなどに入れます。この際、アルコールを入れても問題の内容器を使うようにしてください。

 

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②筆などで粉が残らないようによく混ぜます。

 

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③ケースの上部5~7cmほどに②で作った液体を筆でムラなく塗りつけます(ケース側面全体に塗っている方もいます。もちろんそのほうが脱走しにくいかと思いますが、外からエサの減りや水分量を観察出来るように私はこのくらいにしています。ご自分の飼育スタイルに合わせて塗る幅を調節されるとよいと思います)。

 

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④液体の乾燥を待ちます。炭酸カルシウムとエタノールの配分がちょうどよければすぐに乾きます。

 

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⑤側面すべての辺に塗れば完成です。あとはゴキブリに合わせて床材やシェルター、エサを入れます。

 

白色ワセリンの場合

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①指先に少量取り、ケース側面にムラなく薄く塗りつけます。炭酸カルシウムと同様、ケース上部に5cm以上塗りましょう。水で溶いたりといった作業がない分、手間は少なく、白色ワセリンの塗布作業はこれで終わりです。ちなみに、白色ワセリンを別ケースに取り、ドライヤーで少し温めた後に塗るとより塗りつけやすいです。

 

脱走防止ネット・シート

 多くの場合、飼育ケースのフタには通気性を確保するための網目や穴が開いています。ゴキブリの種類によってはその隙間からも脱走することが可能なので、ケースとフタの間にネットやシートを挟み、脱走を防止する必要があります。ここでは私の使用している2種類のネット・シートをご紹介いたします。

 

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昆虫用虫よけシート

ホームセンターなどでよく販売されている昆虫用のコバエ防止シートです。私は「虫よけシート1番」という商品を使用しています。園芸用で売られている不織布でもいいのですが、こちらのシートのほうが厚みがあり、フタに挟んだ時に形が残るため再度ケースを閉めるときに被せやすく便利なので愛用しています。不織布に比べると多少値段は高いです(そうはいっても45cmケース用3枚で200円ほどです)。

 

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網戸用取り替えネット

網戸の張り替え用に販売されている金属製のネットです。飼育ケースの大きさに合わせてカットして使用します。切断面から編み込みがほどけてしまうので切るのに多少のコツがいりますが、大きい割に安価でゴキブリに穴を開けられる心配も少ないためお勧めです。通気性がよく、水にぬれても大丈夫なため密封容器の中央部を切り抜き、万能ボンドでこのネットを張り付けることでマダガスカルゴキブリの仲間にちょうどいい容器が完成します。小さいとはいえ網目があるので、初齢幼虫がとても小さい種類などには使用できません。

 

飼育棚に施す脱走防止

飼育ケースを置いている棚からのケース転落などを防ぐことも脱走防止には重要です。

 

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 万が一地震などが起きた場合、飼育棚からケースが落下すると多くのゴキブリが脱走してしまう危険があります。そのため、飼育ケースを収納している棚に落下防止の工夫をしておくといいでしょう。

 私の管理する飼育部屋では、ケースの落下を未然に防ぐようにアルミ棚にシリコンチューブを張っています。
 ゴムの片方にはフックを取り付けてあり、世話をする時は簡単に外せます。このフックはクルクルと回転するので、ゴムがねじれてしまうこともありません。

 

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 私が使っているのは「ニッサンチェイン まわるフック」というもので、Amazon で購入することができます。シリコンチューブはホームセンターなどで測り売りしているもので十分です。
  フックのカギの部分に、余ったシリコンチューブを取り付けると金属音がならず、かつしっかりと固定できるようになるのでおすすめです。

 この方法は飼育ケースだけでなく、液浸標本を入れたケースの落下防止にも使用しています。​
  なにか起きてからでは遅いので、こまめに確認、アップデートしつつ万が一に備えることが重要です。

 

飼育部屋に施す脱走防止

 飼育ケースから脱走させないのが最良ですが、飼育していると予期せぬ出来事によって移出してしまう可能性もあります。飼育ケースだけでなく、飼育部屋にも隙間の目張り、トラップの設置などを行い、野外への脱走を防止しましょう。

 

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ごきぶりホイホイ

いわずと知れたゴキブリトラップです。万が一逸出した際を考え、飼育部屋に数個設置しておくとよいかと思います。定期的に確認することで脱走しているかどうかや、どの種が脱走しているかというのも確認できるため(なにもかかっていないことが一番ですが)あると安心です。1か月は十分効果があるということで、私は1か月ごとに回収して新しいものに変えています。設置する際に屋根の部分にマジックペンで設置日を書いておくと交換時期がわかりやすいのでお勧めです。最近のほいほいには設置日を書く場所が用意されています。

 

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ブラックキャップ

毒餌タイプのゴキブリ駆除トラップです。遅効性なので摂食した個体が他個体のいる場所で死亡したりフンをしたりすることでそれを食べた他個体も駆除することができます。複数個体が逃げ出していた際などにまとめて駆除することができます。ゴキブリの餌となるものが周りに少ないほどこの毒餌に誘引されるので、飼育部屋を清潔に保つことも重要です。1年間効果があるとのことですので、当方ではだいたい6ヶ月~1年で交換しています。こちらも設置日を天井に書いておくと便利です。